元刑事が書くデジモノブログ

警察歴7年の元刑事が、警察体験談からデジモノレビューまでやってます!

覚せい剤の恐ろしさを目にした話

おひさしぶりです、massanです。

今週初めに退院してから、ちょっとバタバタして更新が遅れました。スミマセン。

今回は警察・犯罪に関する単発ネタです。

  

近年の薬物事件の実態

昨今でも某歌手や元プロ野球選手の覚せい剤使用疑惑が報道されたりと、消えることのない薬物犯罪。

厚生労働省の調査による近年の薬物事件の実態は、下記のリンク先にあります。

http://www.mhlw.go.jp/bunya/iyakuhin/yakubuturanyou/dl/pamphlet_04.pdf

http://www.mhlw.go.jp/bunya/iyakuhin/yakubuturanyou/dl/pamphlet_04.pdf

 

この調査結果を見ると、

  • 覚せい剤違反で検挙された人数は、平成15年あたりからほぼ横ばい
  • 平成19年以降、覚せい剤事犯の再犯比率は上昇傾向
  • 大麻や危険ドラッグについての話題も近年著しく報道されたが、依然として覚せい剤により検挙された人数が圧倒的に多い

以上のことがわかります。

私が警察官として働いている間にも、覚せい剤でしょっぴかれた人間を何人か見ました。

ここからは、その中でも衝撃的だったときの話を書きます。

 

覚せい剤の恐ろしさを目にした話

犯罪の端緒

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私が機動捜査隊にいた時の話です。

深夜3時ころ、ある会社の事務所にある警備システムが作動しました。

ウチの県は、会社の警備システムが作動すると警察にも通報が入り、警察官も現場に行くようになっていました。

 

近くに車を停め事務所に進んで行くと、途中の草むらにRV車が停めてありました。

頭から突っ込んだ形で、道路にも少しはみ出ています。

無造作に停めた感じです。

会社の周りに人家はありません。

周りの事務所も明かりは全て消えています。

明らかにこのRV車が浮いた存在に見えます。

 

中をのぞいてみると、助手席になにか黒い物体が見えます。

「なんだありゃ…?」

ライトで照らしてみると…なんということでしょう。

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黒色の自動式拳銃が一丁置いてありました。

(あとから分かったのですが、これは脅しに使うためのモデルガンでした)

 

そうしていると、事務所の中から何を言っているかはわかりませんが、男の大声が聞こえてきます。

なにやらガチャンガチャンと物を倒す音も聞こえてきます。

 

頭の中で不安がよぎります。

「ヤバい奴がいるかもしれない」

身の危険を感じました。

 

意味不明な言動の男を任意同行 

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事務所の中に入ると、大男が備品や窓ガラスを壊していました。

警棒をかまえ「何をしている!」と声をかけます。

この男が泥棒目的で事務所に入ったと思っていたのですが、大男から返ってきた返事は、予想外の返事でした。 

大男「オヤジが拉致されたけん、探しとるんじゃあ…」

警察官を見ると、意味不明なことを言いながらも、急におとなしくなった大男。

事情を聞きたいから、警察署に同行してもらうと言ったところ、素直に応じました。

 

しかしどうにもこうにも話がまったくかみ合いません。

当直長が刑事課長だったので、すぐさま「ちょっと覚せい剤の反応調べてみてくれ」と指示が出ました。 

採尿検査をしたところ、尿から陽性反応が出ました。

追求すると、男は覚せい剤を打ったところまでしか覚えていないと言います。

 

まったく会話が成り立たない 

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取り調べのやりとりです。

私「それじゃあ、名前と住所から教えてください」

大男「だめだだめだだめだだめだだめだ」

私「何がダメなんですか?」

大男「あそこ見てみろ、あいつらが、電波を、送ってきてるだろ、ほら、見て、来る来る、こっち来る!!!!!」

私「???」

大男「ちょっと待って、オヤジから、電話かかってきたから!!!」

そう言うと、大男は机の上に置いていた私のノートをつかみ、メガホンのような形に丸めました。

そして片側を耳にあてて、またブツブツと話し始めます。

大男「もしもし、もしもし、あいつらが、あいつらが、きてるよそこまで」

白目になって、必死に誰かと電話をしているつもりになっています。

フーフーと激しく息をはきながら、助けて、助けてとブツブツ言っていました。

 

私「ええと、そうしたらこのノートに名前とか住所とか書いてみてもらっていい?わかる範囲でいいから、なんか自分のこと書いてみて」

大男「あああああああああ!!!!!」

私「???」

大男「あれあれ、迫ってきてる、黒いのがズルズルって、こっちに迫ってきてる!!助けて!!助けて!!」

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大男は天井と壁の継ぎ目を指差して、必死になにかが迫って来ると訴えてきます。 

どうやらこの継ぎ目から、黒色の液体のようなものがジワジワと染み出てきて、自分の体に入って来ると言いたいようです。

 

このやりとりから「覚せい剤が見せる幻覚作用」というものがよく分かりました。

覚せい剤を打った人間には、普通の人には見えないものが見えていたり、聞こえないものが聞こえているようです。

覚せい剤による影響を目の前で見ることで、薬物の恐ろしさを深く理解することができました。 

 

結局この大男は、薬の作用が落ち着くまで6時間近く無睡のまま叫び続け、落ち着いてから調書を取って通常逮捕しました。

 

出所してからも覚せい剤との戦いは続く 

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覚せい剤取締り法違反で検挙された人間は、他の犯罪で検挙された場合よりもマークされやすいです。  

覚せい剤を一度使った人間は、依存性の高さからなかなか覚せい剤を断つことができないので、再犯で検挙される可能性が高いからです。

ウチの署では、分厚いファイルに薬物で検挙されたことのある人の住所や顔写真が載ったリストがまとめてありました。

 

また覚せい剤は、自ら望んで手に入れるケースだけとは限りません。

これは別の案件ですが、暴力団が関係している風俗店で、風俗嬢が働き始めてすぐに覚せい剤を打たれ、いわゆる「シャブ漬け」状態にされているものもありました。

こうすることで、風俗店を簡単に辞めることができなくなります。

店から逃げると覚せい剤が手に入らなくなりますからね。

 

いずれにせよ、一度でも覚せい剤が体内に入ると、肉体だけでなく社会的にも元には戻りづらくなります。

もしかしたら、一生覚せい剤と共に生き、最後にはボロボロの生活と肉体になるかもしれません。  

 

おわりに  

覚せい剤は、一度その筋の関係を持ってしまうと断つのが難しい問題です。

厚生労働省や警察庁を始め、覚せい剤の所持や使用が禁止されている広報は、みなさんも一度は目にした事があるでしょう。

しかし肝心の恐ろしい部分についてはあいまいな表現も多く、あまり具体的でないことがほとんどです。

 

人によっては「そこまで知らなくてもいい」と言う人もいるでしょうが、今回の記事のような具体例を知ってもらうことで、薬物犯罪の撲滅がいかに重要な課題であるかを今一度強く感じて頂きたいです。